都市と農村

都市と農村

2014年10月10日

田舎と都会の良い関係とは

都会に住んでいて、田舎が存在感を発揮するシーン、それはスーパーの生鮮売り場。

しかし、東日本大震災の直後、スーパーやコンビニの商品棚は空っぽ、買い占めも起き、多くの店がシャッターを閉め、交通や物流も停滞し、日常生活の利便性を取り戻すには、数週間が必要でした。

一方、都会に近い田舎の九十九里。震災直後、いつもは価格でしか交渉しないバイヤーたちが値段も聞かずにこぞって買いたがりました。都市部に住む友人のために、お米や野菜を届けると、人が群れを成して買い求めました。ちょっと嫌味っぽく書いていますが、生産者としたら、これがその時の素直な印象でした。でもこんな生産者と消費者の素晴らしいとはいえない関係が長続きするはずがないのです。

震災で多くの消費者が食の大切さ、国産の大切さに気付かされました。そんな今こそ、新たな関係づくりが必要なのではないかと考えました。

朝市をやってくれないか

そんな時、都市部のとあるマンションの自治会から、定期的な朝市開催の相談を受けました。もしかしたら、これが都市と農村の良い関係に繋がるのではないか。利便性や見た目、低価格という尺度に左右されない、両地域にないものを補完しあえる関係づくりへの挑戦がスタートしました。

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オーナー制度で補完しあえる関係

都会の消費者に、農業や地域という部分にも焦点をあててもらいたい。そう考えた結果、オーナー制度による畑と田んぼの運営を企画しました。例えば、10a(1,000平米)の畑を年会費で運営。そこで収穫した野菜は、定期的に開催される朝市で販売。自治会に所属している消費者は、野菜セットが安価で手渡せるという仕組みでした。生産者にとって主な収入源となる年会費は、自治会費で捻出。安定的な収入が難しい農業において、お互いに補完しあえる仕組みであると考えていました。

また派生的に生まれるであろう農業体験などの取組みは、田舎の観光入込増や消費額増にもつながるのでは、と期待しました。しかしこの企画は、自治会長の海外出張によって、白紙になってしまいました。そこで代替地として浮上してきたのが、浦安市の堀江フラワー通り商店街でした。

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計画変更を人との縁で乗り越える

浦安市の堀江フラワー通り商店街での朝市開催に際して、浦安市に本社のある株式会社ダイム(以下「ダイム社」とします)に多大なるご尽力を賜りました。ダイム社との接点は、千葉県を拠点とするベイエフエム(FM78.0)のラジオパーソナリティー、KOUSAKU氏が主宰するゴミ拾い活動に端を発します。

ゴミ拾い活動を通じて、ダイム社は浦安地域で、当法人は九十九里地域で、「ゴミを捨てない気持ちを育もう」と試行錯誤を繰り返し交流を深めてきました。

ダイム社はその後、横芝光町で米作りにも3年間取り組んでこられたという経緯もあり、朝市の相談をしたところ、スタッフ一同で場所の選定、駐車場の手配、什器の手配に至るまで、ご協力を頂きました。そして、初会合から6ヶ月の準備期間を経た2013年4月28日、堀江フラワー通り商店街において、毎週日曜日に朝市「九十九里野菜市」を開催するに至りました。

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自慢できる野菜を売りたい

浦安住民との信頼構築に向け、最初に取り組んだのが、自慢できる野菜を提供してくれる生産者を募ることでした。今回の販売地は浦安市ということで、野菜も単に「九十九里の野菜です」だけではお客様は集まらないと考え、野菜の鮮度維持も念頭に置き、横芝光町と匝瑳市を中心としたエリアで、無農薬や有機栽培の野菜を生産する生産者3件を中心に取り扱わせて頂きました。

浦安市内での朝市に際して、最初に悩んだのが鮮度でした。同じ千葉県といえど、東京ディズニーランドのある浦安市は千葉県の外れ、高速道路を使っても1時間はかかってしまいます。5月にもなれば、強い陽ざしと長距離運転の風で、軽トラックの荷台では品質が劣化し運べません。そこで、軽トラに幌を付け陽ざしを遮り、折りたたみの保冷庫+保冷剤で品質劣化を最大限少なくしました。朝採り野菜といえど、品質保持は最後まで悩みの種となりました。

一番大切なものは何か

悪戦苦闘、試行錯誤しながらも、ほぼ毎週浦安市に通い、浦安市の住民とたわいもない会話をしながら、今日のおススメなんかも買い物カゴに入れてもらう。月1回は実際に生産者にも朝市に来てもらい、住民に直接話をして調理の方法などを教えてもらう。そんな対話によって、信頼構築への第一歩を踏み出しました。

その後、口コミ等によって野菜市の噂は浦安市内さらには近隣の都内までも広がり、浦安市内のベイエリアや、錦糸町や亀戸での朝市開催を打診いただくなど、運営は順風満帆のように感じました。しかしながら解決できていない問題もありました。1回の野菜市での売上目標は5万円。1店舗だけの朝市、しかも単日勝負では仕入れ調整が難しく、開店後すぐに「売切れ」が出てしまうことや、売れ残りが出てしまうこともありました。

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若者の街の高齢地帯

浦安市といえば、千葉県で最も高齢化が進んでいない街。つまりは、千葉県で最も若者が多く住む街です。しかしながらこのフラワー通り商店街周辺は下町といった感じで、朝市にお越し頂くお客様の7〜8割はご高齢の方でした。多くのお客様は、歩いていける範囲にスーパーが無いという理由で、朝市にお越し頂いているということがわかりました。そして、その客層が物語るかのように、夏場になるにつれ、客足は遠のき、せっかくお目当ての野菜のために歩いてきていただいても売切れ。こういったちょっとしたことが、お客様との信頼を揺るがしかねない問題へと拡がっていったのです。
また、このプロジェクトを担当していたスタッフの離脱(家庭の事情により埼玉県へ移住)も大きな痛手となりました。マンパワー不足に陥ってしまっただけでなく、浦安市民と交流してきた「いつものお兄さん」が居なくなってしまったことが、信頼構築を目指す中での障壁となりました。

大きな期待と可能性を秘めながらも、「九十九里野菜市」は、2013年9月末をもって、一時中止を余儀なくされました。

現在は、ダイム社を通じて、浦安市内の食品スーパーに対してオーナー制度のご提案をさせて頂けるよう、企画を温めながら、年1回くらいは浦安の皆さまとお会いする機会を設けていきたいとの思いを胸に秘めています。

by akiba

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